「おいしさ」は、まず見た目から

新年、あけましておめでとうございます。

2017年も食品業界では、新製品が続々と登場するのでしょうね。スーパーやコンビニには、たくさんの似たような種類の商品が陳列されている時代に、新しいものづくりへのチャンレンジを続ける開発担当者には、本当に頭が下がります。消費者の一人として、良い意味で期待を裏切られるような新しい感覚の食品に出会うのが楽しみです。

消費者の期待を満たす、あるいは超える商品こそが、ロングセラーに繋がる、延いては企業に利益をもたらすものでしょう。それには、価格やパッケージ、広告だけでなく、中身の品質が、消費者の購買動機を満足させるものでなければなりません。

人は、五感を駆使して味わうわけですが、一番最初に遠位性感覚である視覚が優位に働きます。つまり、食品の外観を見て、それを美味しそうとか、新鮮そうとか、判断が始まります。そして、口にしたときは、見た目が影響して、呈味成分量以上に苦く感じたり、甘く感じたり、味への相互作用も働きます。

色や形状などを官能評価するときは、環境(明るさなど)の制御が必要となります。また、分析的に色を測定するには、一般的に分光測色計が用いられますが、小さい範囲(直径で2〜10cm程度)を平均化してL*a*b*などの色指数で表現するので、なかなか不均一な食品の見た目と相関させることが難しいです。

一方、アルファ・モスのビジュアルアナライザー IRISは、一定光源のボックス内に置いたサンプルの画像を高分解能のCMOSセンサーで取得し、最先端の画像処理および多変量解析ソフトウェアを駆使して外観の差を数値化する仕組みです。

IRIS

最大測定面積が27cmx39cmなので、大きな食品サンプルであっても目視で観察するのと近い条件で評価することができ、全体な色のバランス(1ピクセルごとに色を数値化)、形状、大きさ情報を得ることができます。こうしたデータは、消費者の嗜好を予測する説明変数として用いることで、好みに影響する色(素材)、形状などを同定することができます。

あなたは、どちらのハムを食べたいですか?

IRIS ham

新年のご挨拶

あけましておめでとうございます。
旧年は、途中でブログの更新頻度が減ってしまいましたが、今年は、なんとか挽回していきたいと思います。どうぞ本年もよろしくお願い致します。

さて、新年の幕開けと同時に、アルファ・モス・ジャパンの第9期がスタートします(今期から決算月が12月に変更となりました)。心新たに、官能分析手法の普及にさらに努めていきたいと思います。

アルファ・モス・ジャパンのミッションは、知覚の評価における機器分析と官能評価の科学的な融合です。昨年も、国内外の学会やセミナーで香りや風味の機器分析や官能評価事例を発表してきました。お陰様で、ユーザー様の具体的な成功ケースも増えてきています。
http://www.alpha-mos.co.jp/event/index.html

2016年上期には、次のようなプログラムを予定しています。

1月27日 TMS研究会
「イオン分子反応質量分析計の概要とリアルタイムガス、におい分析への応用」
2月3日 北海道食品加工研究センターセミナー
「におい分析の最新技術と食品開発・品質管理への活用事例」
3月上旬 Herbert StoneによるQDAワークショップ
5月18日〜 ifia JAPAN 2016
6月5日〜 ISOT2016
17th International Symposium on Olfaction and Taste
6月上旬 アルファ・モスユーザーフォーラム

今年も多くの場で、皆様とお会いできることを楽しみにしております!
SeasonsGreetings2016blog

においライブラリ

味には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味で表現される基本味があり、それらに由来する代表的な化合物の知見も多いですが、におい関しては、種類は多すぎて(40万種類とも言われています)、決まった言葉がありません。QDAにおける用語開発でも、においは形容詞で記述されることが多く、その解釈をつけるのに難しいことがよくあります。

清酒やビール、紅茶、コーヒーなど、特定の業界によっては、フレーバーホイールと呼ばれる用語リストが開発されていて、商品の風味(味や香り)の特徴を記述するときの基本として利用できます。これは、業界内の風味に関するコミュニケーションにおいて大変便利です。

Wine-Aroma-Wheel-Master-Sommelier_s
(出典元:http://www.aromaster.com/)

それでも汎用的なものは、なかなかありません。しかし、香気分析に関する学術論文を探っていくと、においに関する表現があちこちに目につきます。におい嗅ぎGGで分離された化合物に対するにおいの質も報告されています。ただ、問題はリソースがあちこちに点在していることです。

こうした文献情報を整理してデータベースにしたものが、アルファ・モスから発売されています。AroChemBaseは、保持指標に関する化合物ライブラリ(83500成分収録)であり、そのうち約2000成分のにおい質(芳香からオフフレーバーまで)や嗅覚閾値データが、10000 を超える豊富な文献から集められてひとつになっています。

収録されている情報量だけでなく、検索もいろいろな角度から行えます。感じたにおいの種類(甘い香り、カビ臭・・・)、推定される化合物(アルデヒド、硫黄系・・・)、またはサンプル名(コーヒー、レモン・・・)から・・・。まさに、においライブラリと言える機能を網羅しています。

arochembase_c

GC-O分析で、嗅ぎ分けた化合物のにおいをどのように表現したらよいのか困る時、GC-MSで同定された化合物が、いったいどのようなにおいなのか調べたい時、定量された成分濃度が、においを感じる量であるか確認したい時、AroChemBaseライブラリの使い道はたくさんありそうです。

機器分析手法をどのように製品開発のプロセスに活かしますか?

「消費者視点からの製品開発セミナー」(2015/6/5開催)には、多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。製品の官能的特徴に加え、消費者のもつイメージの調査の仕方、それらを複合的に解釈、まとめる手法についてフォーカスしたものでした。

さて、分析型のパネル、または消費者を用いて製品の評価をすることは、製品開発プロセスにおいて欠くことができないステップであるのは間違いないのですが、その頻度には限界があります。試験する人の問題(時間や感覚疲労)、それにコストの問題です。辛いものや苦いもの、あるいは臭いものをどれだけ継続的かつ客観的に評価できるでしょうか?

そこで、機器分析手法がスクリーニングに役立ちます。ヒトの知覚がいかに複雑に作用するかは、これまでのブログに書いてきました。機器分析(センサーなど)の単一データが、ひとつの属性を直接的に表現できるに越したことはないですが、単純な系では容易であったとしても、原料、プロセスが変わることで、その因果関係が常に維持されるとは限りません。

たとえば、水溶液中のショ糖濃度が増えれば、感覚的に甘さは増え、その結果は溶液の粘性値とも高い相関を示します。しかし、これは限定した系での単相関であり、外観やほかの特性が変化することで、解釈に誤解が生じます。

では、どのように機器分析データを使ったらよいか・・・。
多変量データによる相関です。サンプル選択の際は、競合品などを加えて、できるだけ差があるものを用意します。

記述型の官能評価や嗜好調査を行った15サンプルくらいが理想です。それによって、多感覚器分析システム(外観、香り、風味、食感・・・)による分析値と重回帰分析にて相関モデルが構築され、特定の評価用語に対してキーとなる化学成分、物性値の組み合わせも分かります。

どのような感覚がどのような分析値と相関があるか、また感覚の相互作用がどのようにあるかが、はっきりしない段階では、できるだけ多くのモダリティに関するデータを扱うことが大切です。

ひとつの属性Yを予測する回帰モデルであれば次のようになります。
ひとつの属性Yを予測する回帰モデル

たとえば、赤ワインの「苦味」を予測する重回帰分析を行うと、電子味覚システムの1つのセンサーの応答値、高速GCにより定量されたエタノール量、そして色(a値)がモデルに貢献していることが明確となります。

赤ワインの「苦味」を予測する重回帰分析

トライアル・アンド・エラーのプロセスにおける最終判断はヒトですが、それでも多くの試作品や開発品の中で、最適な解を得るために、機器分析をうまく使いこなしてみると、製品の開発スピードが上がり、開発フェーズの意思決定に役立ちます。

五感のイメージ

脳で味わう

ナショナルジオグラフィックチャンネルの「脳トリック2」という番組で、食欲について面白い実験がされていたので、その一部を紹介したいと思います。

世の中は食べ物の情報であふれています。
ブログ、料理番組、有名人のコメントなど・・・。日頃、私たちはどのように食べるものを選んでいるのでしょう?実は、様々な感覚が働いているため、食べ物そのもので選んでいるわけではないのです。

どれを食べるか選ぶときに基準となるのは、体が求めるものではありません。脳が惹きつけられたものです。つまり、何を食べるのか、決めているのは、わたしたちの脳。

食品産業は、多くの点でショーだと言えます。
観客は、わたしたちの脳。食品を売るには、食べたいと思わせるテクニックが必要です。そのひとつが着色料。着色されるには理由があります。スーパーなどで売られている食品が、鮮やかできれいなのは、消費者を惹きつけるためです。

私たちは食品を食べるずっと前から、目で味わっています。脳が視覚からの情報を感じ取っているためです。食品の色が鮮やかで派手であるほど、脳は食欲を刺激されます。さらに、多くの場合、箱の中身よりパッケージで食品を選んでいます。

すべての色の中で、赤と黄色が最も食欲を刺激すると言われています。食品の見た目は、実際にどのような味がするかより大切です。違うメーカーの製品でもまったく同じように作られ、まったく同じような味がすることがあります。その場合、大切なのはパッケージでしょう。

目隠しで視覚情報を遮断し、さらに鼻栓で嗅覚情報を遮断すると、味が分からなくなります。食のエキスパートであるフードライター、フードブロガーたち3名が挑戦しました。シナモンを口にしたら、カレー粉、コショウ、イチゴ味のパウダーなどの答えが・・・・。

バーベキューソースは、イチゴ味のピューレ、マヨネーズ。ゆで卵を食べさせたら、豆腐、硬めのゼリー、マシュマロなんていう回答。ゼリーは、クランベリーソース、プリン。ペペロニの場合は、加熱しすぎた野菜、ベーコン、スパイシーなフルーツ???

味覚と嗅覚は密接なつながりがあり、両方同時に働きます。そのため、鼻を摘まんで食べると、どんなに香りが強い食べ物でもまったく分かりません。目隠し、鼻栓、協力者があれば、家で試すことも可能です。ゆで卵とマシュマロを間違えても決して驚くことではありません。

テーブルクロス、イス、スプーン・フォーク、ナプキン、どれが食べ物の味をおいしくさせますか?答えは、スプーンやフォーク。それらの素材は味に大きく影響します。白いプラスチックのスプーンで食べると、金属のスプーンで食べたときより高級な味に感じるそうです。

食事をするときは、すべての感覚がフル活動しているんですね!つまり口で食べているのではなく、脳で食べているということです。

当社の見た目と香りと味の刺激を測定する技術に、脳の情報処理の仕組みを加えて食欲を測るシステム・・・
近い将来、完成させたいものです。

スプレー醤油 vs 醤油差し 

先日、朝の情報番組「ZIP!」(日本テレビ)にて、スプレー醤油の紹介がありました。醤油差しから垂らしてかける醤油より、スプレー式であれば少ない量で、万遍なく食品に行きわたるよう。

被験者での実験では、通常の醤油差しから醤油を垂らした焼き魚とスプレー式で醤油をかけた焼き魚を食べ比べたら、スプレー醤油だと通常の醤油差しの3分の1の量ですむことが判明。

そこで、科学的な測定のお手伝いをしたのが、弊社のソフトイオン化質量分析計「FlavorSense」。これは、香気成分の変化をリアルタイムで測定できます。

同じ量の醤油をそれぞれビーカー内にかけてみると、スプレー醤油の香りの立ち上がりの強さがはっきり!

スプレー醤油測定

「香りを強く感じると、味自体を濃く感じる」との東京農業大学 食品香粧学科の佐藤教授のコメントもあり、番組出演者たちも納得。

さて、その話題となったスプレー醤油、早速ネットで購入・・なんて思ったら、すでに品薄状態に。できるだけ量を減らして塩分控えめに、それでいて美味しく!という健康志向は、やっぱり多くの方の関心事のようです。

ただし、スプレー噴霧のとき、周りに飛び散らさないように注意しましょう!

食の味って?

「食の味を感じること、測ること、そして見せること」
前回ブログでお伝えしたとおり、弊社5周年記念セミナーのタイトルです。

「味」と一般に言われる感覚は、舌以外で感じる信号・・・外観やにおい、触感、温度なども大きく関わっています。

たとえば、目をつぶって鼻を塞いで、身近にあるコーヒーと紅茶を飲み比べてみてください。どちらがコーヒーで紅茶なのか、区別はなかなかつきません。

実は最近、弊社ではノーズクリップをノベルティで用意しました。水泳用の鼻栓です。いかに、においが味に影響しているか、面白半分にノーズクリップをつけて色々食べ比べてみると、あらためて嗅覚の重要性を体感します。

ノーズクリップ

たとえば、先日「プリンに醤油をかけたらウニの味」という噂を鼻を摘まんで検証しましたが、やっぱり違いましたね。
また、だし醤油を舐めても、鼻を摘まんだ途端に、あの独特のだし感が感じられません。

ちなみに、キッコーマンさんのホームページでは、しょうゆの持つ「おいしさ」について、「味」「香り」「色」の三位一体から生まれると解説されてます。
http://www.kikkoman.co.jp/trinity.html

5周年記念セミナーにおいて、東北大学 坂井信之先生による講演では、異なる「色」の眼鏡をつけて食することで、同じマグロの味(の感じ方)に違いが出るという実験の紹介もありました。

そんな複雑な「味」を測定し、視覚化する・・・。
単に様々な分析データを組み合わせればいいわけではないですが、ヒトの知覚に最も相関のある要因を探すという意味でも、また科学的に説明するという点でも、ちょっと多面的(揮発・溶解成分、色、硬さ・・・)な分析を一度は行っておくことは必要ですね。

意外な項目が、味に大きく影響している、なんてことがあるかも!

お陰様で5周年!

こんにちは。

アルファ・モス・ジャパンは設立5周年を機に、ブログを開設いたしました。みなさま、これからよろしくお願いいたします。

さて、先日、ifia JAPAN 2014 第19回 国際食品素材/添加物展・会議にて、5周年記念を兼ねた、「食の味を感じること、測ること、そして見せること」と題するセミナーを開催いたしました。

多くのお客様にご参加いただき、この分野の関心度・重要性とともに、難しさを改めて認識いたしました。

今後、このブログを通じて、においや味や色のいろいろ(分析手法や事例、関連技術)について、身近な体験談などを、ゆっくりなペースですが、アップしていきます。

気が向いた時にでも、覗いてください。

アルファ・モス