においライブラリ

味には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味で表現される基本味があり、それらに由来する代表的な化合物の知見も多いですが、におい関しては、種類は多すぎて(40万種類とも言われています)、決まった言葉がありません。QDAにおける用語開発でも、においは形容詞で記述されることが多く、その解釈をつけるのに難しいことがよくあります。

清酒やビール、紅茶、コーヒーなど、特定の業界によっては、フレーバーホイールと呼ばれる用語リストが開発されていて、商品の風味(味や香り)の特徴を記述するときの基本として利用できます。これは、業界内の風味に関するコミュニケーションにおいて大変便利です。

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(出典元:http://www.aromaster.com/)

それでも汎用的なものは、なかなかありません。しかし、香気分析に関する学術論文を探っていくと、においに関する表現があちこちに目につきます。におい嗅ぎGGで分離された化合物に対するにおいの質も報告されています。ただ、問題はリソースがあちこちに点在していることです。

こうした文献情報を整理してデータベースにしたものが、アルファ・モスから発売されています。AroChemBaseは、保持指標に関する化合物ライブラリ(83500成分収録)であり、そのうち約2000成分のにおい質(芳香からオフフレーバーまで)や嗅覚閾値データが、10000 を超える豊富な文献から集められてひとつになっています。

収録されている情報量だけでなく、検索もいろいろな角度から行えます。感じたにおいの種類(甘い香り、カビ臭・・・)、推定される化合物(アルデヒド、硫黄系・・・)、またはサンプル名(コーヒー、レモン・・・)から・・・。まさに、においライブラリと言える機能を網羅しています。

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GC-O分析で、嗅ぎ分けた化合物のにおいをどのように表現したらよいのか困る時、GC-MSで同定された化合物が、いったいどのようなにおいなのか調べたい時、定量された成分濃度が、においを感じる量であるか確認したい時、AroChemBaseライブラリの使い道はたくさんありそうです。

QDA法(5)感覚尺度の使い方

これまで、QDA法の用語開発について書いてきましたが、そのプロセスの一部でもあるラインスケールについて今回は取り上げます。

ラインスケールの種類は様々です。

アンカーがないスケールであったり、
QDA5-1
アンカーをスケールの両端につけたものであったり、
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アンカーをスケールの内側につけたものであったり・・・。
QDA5-3

QDA法では、一番最後のアンカーを内側につけた長さ約15cmのスケールを使用します。スケールは、それより長くしても感度が上がらないことが確認されており、また逆に短くすると感度が下がってしまうことが経験的に分かっています。

ラインスケールに、目盛りを振ることはどうでしょう?パネリストの目安のために、つけたくなりますが、QDAにおいては推奨されません。たとえば、真ん中に3つのアンカーをつけた場合では、応答の変動が10〜15%大きくなり、結果的に感度が減少してしまいました。

また、数値をスケールにつけるのも推奨されません。数値は、パネリストにとってのバイアスとなり、たいていは、自らの感覚を覚えるより、数値を覚えることに一生懸命になります。そして、マイナスの数値があれば、誰もがそれをネガティブなものをとらえてしまうでしょう。

このような理由で、現在のラインスケールが誕生しました。

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アンカーの上には、各用語について尺度の方向性を示す用語をつけます。色の濃さであれば「暗い, 明るい」、香りの強さであれば「弱い, 強い」均一性であれば「不均一, 均一」などです。そして、パネリストは各評価用語について、感じた強度の位置にマークをつけます。

データ解析で用いられるスコアは、スケールの左端からの距離を算出したものです。紙での試験だと、物差しで測る手間と人為的ミスを考慮しないとならないですが、最近では便利なソフトウェアも発売されています。

ところで、どのようにこのラインスケールを使うのでしょう?パネリストは、用語開発中に評価する多くのサンプルを通じて、試験するサンプルカテゴリーが呈する強度に慣れます。クッキーの甘さであれば、このくらいの範囲か・・・など。そして、その範囲の中で、自らの感覚を基準化し、同じようにスケールを使うことに集中します。

周囲のパネリストがつける位置を気にする必要はありません。なぜなら、“正しい位置”は存在しないからです。とにかく、反復して評価する中で、自らの感覚強度に基づいて再現良くマークすることを心がけるだけです。パネルの中で、“位置合わせ”をすることで、感度の低下が起こります。また、それに費やすトレーニングは莫大なものです。

QDA法では、反復の評価を行い、パネル全体の平均を分散分析で評価します。そして、個人で強度の差があるのは自然と考え、むしろサンプルのスコアを順位に置き換えたとき、パネリスト間でその順位が逆転しないことをより重視するのです。

機器分析手法をどのように製品開発のプロセスに活かしますか?

「消費者視点からの製品開発セミナー」(2015/6/5開催)には、多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。製品の官能的特徴に加え、消費者のもつイメージの調査の仕方、それらを複合的に解釈、まとめる手法についてフォーカスしたものでした。

さて、分析型のパネル、または消費者を用いて製品の評価をすることは、製品開発プロセスにおいて欠くことができないステップであるのは間違いないのですが、その頻度には限界があります。試験する人の問題(時間や感覚疲労)、それにコストの問題です。辛いものや苦いもの、あるいは臭いものをどれだけ継続的かつ客観的に評価できるでしょうか?

そこで、機器分析手法がスクリーニングに役立ちます。ヒトの知覚がいかに複雑に作用するかは、これまでのブログに書いてきました。機器分析(センサーなど)の単一データが、ひとつの属性を直接的に表現できるに越したことはないですが、単純な系では容易であったとしても、原料、プロセスが変わることで、その因果関係が常に維持されるとは限りません。

たとえば、水溶液中のショ糖濃度が増えれば、感覚的に甘さは増え、その結果は溶液の粘性値とも高い相関を示します。しかし、これは限定した系での単相関であり、外観やほかの特性が変化することで、解釈に誤解が生じます。

では、どのように機器分析データを使ったらよいか・・・。
多変量データによる相関です。サンプル選択の際は、競合品などを加えて、できるだけ差があるものを用意します。

記述型の官能評価や嗜好調査を行った15サンプルくらいが理想です。それによって、多感覚器分析システム(外観、香り、風味、食感・・・)による分析値と重回帰分析にて相関モデルが構築され、特定の評価用語に対してキーとなる化学成分、物性値の組み合わせも分かります。

どのような感覚がどのような分析値と相関があるか、また感覚の相互作用がどのようにあるかが、はっきりしない段階では、できるだけ多くのモダリティに関するデータを扱うことが大切です。

ひとつの属性Yを予測する回帰モデルであれば次のようになります。
ひとつの属性Yを予測する回帰モデル

たとえば、赤ワインの「苦味」を予測する重回帰分析を行うと、電子味覚システムの1つのセンサーの応答値、高速GCにより定量されたエタノール量、そして色(a値)がモデルに貢献していることが明確となります。

赤ワインの「苦味」を予測する重回帰分析

トライアル・アンド・エラーのプロセスにおける最終判断はヒトですが、それでも多くの試作品や開発品の中で、最適な解を得るために、機器分析をうまく使いこなしてみると、製品の開発スピードが上がり、開発フェーズの意思決定に役立ちます。

五感のイメージ

官能評価をどのように製品開発のプロセスに活かしますか?

これまで、数回にわたり記述分析法のプロセスの一部について書き込んできましたが、記述分析法だけに限らず、官能評価そのものは、企業における製品開発の重要なプロセスの一端を間違いなく担っています。

しかしながら、社内における官能評価の位置づけは、企業ごとに温度差があり、与えられる予算や人的なリソースの点で、決して恵まれているとはいえません。

もちろん製品開発の成功のカギは、価格や広告などあらゆる要素が絡み合うものではありますが、利益を生み出すための繰り返し購入には、製品そのものの品質(官能的差別化ポイント)が消費者の期待を満たすことが条件となるでしょう。

製品の官能的情報を得るためには、やはり官能評価が必要不可欠です。ただ、何をしたらよいか・・・そんな方のためにセミナーのご案内です。6月5日に、QDAの開発者Dr.Herbert Stoneが来日して、「消費者視点からの製品開発」セミナー(東京)を開催します。

製品開発の中で、官能評価をどのように活かすか、きっとヒントが見つかるかと思います。皆様の参加申し込みをお待ちしております!

20150605製品開発セミナーイメージ

QDA法(4)用語開発2

用語開発のつづきです。

ここまでで、食品がサンプルであれば、12名のパネル全体で最初は70〜100個くらいの用語が出てきます。似たような用語が出てきたら、パネル内でまとめるべきか、それとも別々に用いるべきか、相談してもらいます。

また、意味が分かりにくい用語が出てきたら、それを出したパネリストに説明してもらいます。ここで、それを示すリファレンスサンプルがあれば、出してもらうのも良いです。

ただし、リファレンスサンプルは、その感覚だけを呈するものではないので、いずれにしても正しく伝わらないかもしれません。あまりにリファレンスサンプルの提示にこだわり過ぎる必要はありません。

用語を整理して30個前後くらいまで絞ることができたら、パネル全体で各用語に解釈をつけます。これは、パネル内の認識を共通にする目的もありますし、次にパネルのメンバーが交代して、新しく参加する人がいたとしても、できるだけ用語を引き継いでもらいやすくするためです。

また、2つの異なる特徴のサンプルを提示して、それぞれの用語の強く感じる方を挙手してもらいます。その際、12名のうち全員が同じ片方のサンプルを強いと感じれば素晴らしいですが、たいていは、もう一方のサンプルを指す人が出てきます。そのとき、その用語が理解されていないか、またはそもそも差が少なかったか、違う感覚を示したパネリストに意見を求めます。

こうした繰り返しのワークを通じて、用語が揃ったら、スコアシート(ラインスケール)を作ります。評価する順に(食品であれば、見て、嗅いで、口にして・・・)用語を並べるようにします。これでQDAの準備はできました。

この用語開発のプロセスは、PLのファシリテーション能力が重要です。いかに、パネルから気分良く用語を出させるか、いつも決まった一人に発言させるのではなく、できるだけ全員からの発言を引き出すか・・・。そう、会社の会議の進行とまったく同じなんです!

ミーティング風景

QDA法(3)用語開発1

官能評価に用いる「用語」の選択は難しいですね。単に、基本五味を並べればいいわけでもないですし、開発者メンバーで出した言葉だけでも客観性を欠きます。

QDA法では、選抜されたパネルによって、試験品のグループから特徴の異なる複数のペアを使って、表現する用語を出していきます。外観、香り、風味、食感、後味・・・などそれぞれの属性に分けて、A4の白紙にでも書き記していくと整理が簡単です。

ペアの違いを入れ替えて、何度か繰り返し、パネリストごとに自由に提示してもらいます。繰り返し出現した用語は、正の字で表したらわかりやすいです。つまり、用語の開発は、グループワークです。

この作業は、サンプルのことを良く理解しているパネルリーダー(PL)によってマネージメントされることが多いですが、PLは決してパネルの用語開発を自らの理想に近づくよう誘導してはいけません。

例え、開発コンセプトと違う用語が出てきたり、表現力に欠けるものが出てきても、勝手に削除してはいけません。用語の削除は、パネル内の同意が必要です。

PLがパネルに注意してもらわなければならないことは、“専門的な用語を使わない”ことと、“好みに関する用語”を使わないことです。

用語出しイメージ

QDA法(2)パネルの選抜

QDA法に関する初回の投稿からすっかり間が空いてしまいました。なかなか筆が進まず、申し訳ありません。さて、今回は商品開発におけるQDA法のパネル選抜方法について、要点をまとめることにしました。

まず、パネルを構築するとき、商品の知識をもたない社外の人で構成することが理想とされます。期待や経験に基づいて回答するといったバイアスが、評価に影響することをできるだけ防ぐことためです。

それでも、パネルのコストの問題や商品開発情報が外部に漏れるリスクを考えると、できれば社員の中から、という声が少なくありません。その場合、せめて開発に直接関連しない部署から募るのがいいですね。

その選抜方法ですが、食品の場合、基本五味の識別や閾値試験が採用されることが多いようです。識別ができて、感度が良い人を探そうという目的なのでしょうが、そこで選ばれた人は、果たしてこれから評価する食品そのものにも十分な感度を有する人なのでしょうか?

どんな食品にも一様の感度がある万能な人は、なかなかいません。Dr.Herbert Stoneは、閾値試験の結果と実際の試験に供する食品に対する感度との相関は、50%以下だと言っています。これらは、すでに1950年代のいくつかの論文に報告されています。

それに加えて、五味試験の経験が、次の用語開発においてバイアスになるという危惧もあります(例えば、その食品からは塩味を感じないにも関わらず、「塩味」という用語が出てくる)。つまり、識別試験は、実際に評価するもの、またはそれに準ずるもので行ったほうが良いということです。

試験には、1対2点識別法を用います。外観や香り、風味、食感などが異なるペアのサンプルを複数準備します。このときのサンプル選択には、開発部門や技術部門などの専門家のアイデアを入れると良いですね。他社品や、原料などの一部をわずかに変更したものを加えたり・・・。

しかし、ここで評価が難しいペアばかり用意するのは禁物です。はじめてパネルの選抜試験に参加する人は、最初は不安かもしれません。誰でも当てることができるような簡単なペアも用意して、最初の段階で自信をつけて、やる気にさせるのも重要です。

この識別試験は、最低2回以上繰り返します。偶然で正解しているのか、識別できているのか、を確認するためです。そして、最終的な正解率の上位から(例えば70%以上)パネルに必要な人数を確保します。これらの結果はデータベース化しておくと、将来的なパネルの補充、または選抜の再試験を行う際に役立ちます。

さあ、ここまででパネルの準備ができました。次は、QDAに用いる用語の開発です・・・。

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TDSワークショップを振り返って

11月5日(水)都内で、TDSワークショップを開催しました。当日は、多くの方にご参加頂き、ありがとうございました。

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体験型ということで、グミやチョコ菓子など、試験用のサンプルを用意したのですが、それらがおいしくて、本題を忘れて、ついつい余分に口にしてしまったことも・・・。食品会社の方の日頃の開発努力には、あらためて感服です。

さて、TDS(Temporal Dominance of Sensations)は2000年を過ぎてから開発された官能評価手法のひとつで、これまでのサンプルを口にしたときの一過性の評価ではなく、時間経過に伴う感覚を評価できる特徴があります。

最近では、開発した食品についてスパイダーチャートで示す風味特性の情報だけでなく、時間軸を指標とした奥行のあるデータが求められることも多くなっているみたいですから、そのようなニーズには最適ですね。

FIZZソフトウェアを使えば、TDSの評価そのものは簡単です。あらかじめ、複数の評価用語(最大でも10個程度の属性)を画面に設定し、パネルが口にしてから、咀嚼や飲み込んでいく過程で変化する属性を何かひとつ選択します。

新たに発現した感覚、ちょっと強くなった感覚、そんなところに気を配りながら評価します。それ自体は、定量的な手法ではないですが、評価数(Judge x Repetition)が集まると、時間単位ごとにパネル全体で指示した評価項目の割合(Dominance rate)でグラフを作ることができます。

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まだまだ新しいTDSですが、早くも派生した手法が発表され始めています。評価中の感情(emotion)の変化と一緒にデータをとる「TDE」、評価中の好み(liking)の変化と一緒にデータをとる「TDL」、評価中に複数の項目を選択する「TCATA」・・・。

今後の商品開発でどんなデータが採用されるか、楽しみです。

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時間経過における風味の評価を機器分析で行うには、レトロネーザルの香気成分の分析が、重要です。フレーバーリリース分析計「FlavorSense」による鼻から抜ける特定の香気成分量の変化と、TDS曲線との相関、今度調べてみたいと思います。

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脳で味わう

ナショナルジオグラフィックチャンネルの「脳トリック2」という番組で、食欲について面白い実験がされていたので、その一部を紹介したいと思います。

世の中は食べ物の情報であふれています。
ブログ、料理番組、有名人のコメントなど・・・。日頃、私たちはどのように食べるものを選んでいるのでしょう?実は、様々な感覚が働いているため、食べ物そのもので選んでいるわけではないのです。

どれを食べるか選ぶときに基準となるのは、体が求めるものではありません。脳が惹きつけられたものです。つまり、何を食べるのか、決めているのは、わたしたちの脳。

食品産業は、多くの点でショーだと言えます。
観客は、わたしたちの脳。食品を売るには、食べたいと思わせるテクニックが必要です。そのひとつが着色料。着色されるには理由があります。スーパーなどで売られている食品が、鮮やかできれいなのは、消費者を惹きつけるためです。

私たちは食品を食べるずっと前から、目で味わっています。脳が視覚からの情報を感じ取っているためです。食品の色が鮮やかで派手であるほど、脳は食欲を刺激されます。さらに、多くの場合、箱の中身よりパッケージで食品を選んでいます。

すべての色の中で、赤と黄色が最も食欲を刺激すると言われています。食品の見た目は、実際にどのような味がするかより大切です。違うメーカーの製品でもまったく同じように作られ、まったく同じような味がすることがあります。その場合、大切なのはパッケージでしょう。

目隠しで視覚情報を遮断し、さらに鼻栓で嗅覚情報を遮断すると、味が分からなくなります。食のエキスパートであるフードライター、フードブロガーたち3名が挑戦しました。シナモンを口にしたら、カレー粉、コショウ、イチゴ味のパウダーなどの答えが・・・・。

バーベキューソースは、イチゴ味のピューレ、マヨネーズ。ゆで卵を食べさせたら、豆腐、硬めのゼリー、マシュマロなんていう回答。ゼリーは、クランベリーソース、プリン。ペペロニの場合は、加熱しすぎた野菜、ベーコン、スパイシーなフルーツ???

味覚と嗅覚は密接なつながりがあり、両方同時に働きます。そのため、鼻を摘まんで食べると、どんなに香りが強い食べ物でもまったく分かりません。目隠し、鼻栓、協力者があれば、家で試すことも可能です。ゆで卵とマシュマロを間違えても決して驚くことではありません。

テーブルクロス、イス、スプーン・フォーク、ナプキン、どれが食べ物の味をおいしくさせますか?答えは、スプーンやフォーク。それらの素材は味に大きく影響します。白いプラスチックのスプーンで食べると、金属のスプーンで食べたときより高級な味に感じるそうです。

食事をするときは、すべての感覚がフル活動しているんですね!つまり口で食べているのではなく、脳で食べているということです。

当社の見た目と香りと味の刺激を測定する技術に、脳の情報処理の仕組みを加えて食欲を測るシステム・・・
近い将来、完成させたいものです。

QDA法(1)

Dr. Herbert Stone ― 官能評価を専門に勉強された方であれば、一度は聞いたことがある名前ではないでしょうか?
Dr. Herbert Stone
1974年に米国で市場調査会社TRAGON CORPORATIONを設立し、定量的記述分析法(QDA)を開発した人物です。150本以上の論文を発表し、IFT(Institute of Food Technologists)の会長も歴任しました。

今ではそれなりに歳を重ね、TRAGON社の代表職を去りましたが、それでも官能評価のコンサルタントとして、様々な国に存在するクライアント企業で、パネルトレーニングやQDA手法の確立に力を注いでいます。

私たちは、彼から官能評価(特にQDA)に関するレクチャーを長年受けていますが、そのアグレッシブさはまったく衰えることがなく、感服してしまいます。

彼の哲学、論理は、評価者である「ヒト」の変えることができない本質を汲んだものです。彼の経験は、時間や予算が限られた中で行われる商品開発に用いられる官能評価手法としてきっと役立つものでしょう。

官能評価の主要な目的のひとつは、ある製品を購入する大きな消費者集団にとって推定可能な製品情報を提供することです。この種の情報を得るための方法は、数多くあります。QDA法は、その中の分析的手法です。

感度など適格性が確認された約12(±2)名の被験者で小さなパネルを構成します。試験結果は、プロセスや配合原料、競合製品などの違いに由来する差に関して定量的に求まります。そしてこれらは、配合率の変更や消費者の嗜好評価とのズレを結びつけるための基礎を提供します。

多くの食品、飲料会社では、製品の特徴を評価するために、記述分析プロセスが使われていますが、そのプロセスにおいて、いくつかの混乱があるようです。

このあと、何回かに分けて、パネルの選抜方法、評価用語の作成手順、評価・解析などについてまとめていきたいと思います。