ホームユーステスト:消費者視点の効果的な製品評価手法

ホームユーステスト(HUT)は、実際の消費や使用状況において製品を試験するための有益な方法です。製品そのものの官能特性を測る分析型官能評価とは異なり、消費者の受容度や嗜好の評価においては、センサリーブースなどを利用したセントラルロケーションテスト(CLT)では得られない製品に関する情報をHUTから得ることができます。

HUT vs. CLT

しかし手法によって結果が異なることに注意が必要です。同じ製品をCLTとHUTで試験したとき、HUT条件下でのほうがより高いスコアを得る傾向があります。この潜在的な理由としては、評価条件、消費のタイミング、認知バイアスの影響などがあるでしょう。

HUT条件では、被験者にとってより適切で自然であることから、より高い満足度と好感度につながる可能性が示唆されます。一方、CLTのような標準化された状況での試験は、製品受容性を過小評価されがちです。

また、HUTにおいて被験者が製品を消費したい時間を選択することができるとすれば、そのタイミングはCLTよりも製品にとって適した条件であると予想されます。被験者は、空腹や喉の渇きを感じたときに製品を手にとるかもしれません。

さらに生じやすい認知バイアスとしては、CLTの条件は形式的な実験の感覚を強め、被験者は製品を分析するという思考に置かれ、試験製品に対してより厳しい態度をとることにつながるかもしれません。それに比べてHUTの場合は、被験者が厳密に指示に従ったかどうかを確認することは通常不可能です。そのため被験者の中にはあまり真剣に参加しなかったり、規定された試料量などを無視したりする人もいるでしょう。そうした場合、その罪悪感から製品に対してより寛大になり、より高いスコアをつけてしまう可能性があります。

PM法 vs. SM法

また、ピュア・モナディック(PM)法とシークエンシャル・モナディック(SM)法の2つの提示方法の違いにおいても結果に差が出ることが知られています。

一般的にPM法で得られた平均ヘドニックスコアは、SM法で得られた平均よりも高い傾向が出やすく、これは最初に提示された製品の”first-sample effects”から論理的に生じていると考えられます。PM法では、被験者が製品を自分の内的基準、たとえば普段食しているものや好きなものと相対的にスコアリングすることができるため、より自然な判断につながることが期待されます。一方、SM法では、最初に評価した製品との比較をしがちなため、2番目の製品の嗜好的判断が偏ります。実際、官能特性が大きく異なる2つの製品を試験する場合であれば、結論にほとんど違いはないですが、類似性が高いもの同士の場合、製品を続けて試験するSM法のほうがPM法に比べて有意な製品効果が得られやすいことがあります。”first-sample effects”を排除することはできませんが、バランスのとれた試験設計に配慮することが必要です。

近年では、FIZZやWebフォームなどのITツールを活用して遠隔での試験であってもデータ収集の信頼性を高めることができます。さらに、調査にかかる投資額がCLTに比べて安価であることもHUTの利点の一つです。場所、時間、雰囲気・状況、気分など、さまざまな要素が製品の評価や知覚に影響を与えることから、製品やサービスを調査する目的、理想的な状況次第では、HUTが現実的な結果を得るための選択肢となります。


参考論文: Boutrolle, I., Delarue, J., Armanz, D., Rogeaux, M. & Köster, E.P. (2007) Central location test vs. home use test: contrasting results depending on product type. Food Quality and Preference, 18, 490–499.