イマーシブルームで没入型の官能評価

おいしさや食の楽しさを感じるのは、味や香り、見た目からだけではありません。 周囲の環境にも影響される可能性があります。ポータブルセンサリーブースのメーカー The Lab in the Bag 社が開発したイマーシブルームは、より現実的な環境で官能評価・消費者試験を実施することができるセンサリー没入型のスペースです。周囲の壁に映像を投影し、カフェテリア、公園、森林、ビーチなど様々なシーンをボタン一つで切り替えることができます。没入するための仕掛けとして、映像だけでなく「光、香り、湿度、熱、音、風」といったセンサーが組み込まれており、その強度、向き、位置、タイミングなど細かく制御することができます。

2021年のブログ記事「味の謎」では、フランスのポール・ボキューズ学院が、味に作用する様々な要素や、食べる喜びについての研究をイマーシブルームで行っていることに触れましたが、米国のカリフォルニア大学デービス校の Department of Food Science and Technology(食品科学技術学部)にも、製品開発・イノベーション、研究のために、イマーシブルームが導入されました。本校のウェブサイトに、新しい没入型スペースの紹介と、センサリーおよび消費者科学の准教授 Julien Delarue氏がその活用について語る動画が掲載されています。同氏は、研究室での試験では偏見が生じる可能性を指摘し、現実的な環境で食品を試験することは、よりリアルな消費者の意見を収集するのに役立つと強調しています。

New Sensory Immersive Room at UC Davis Simulates Real-Life Environments for Product Testing

Space Features 360-Degree Video Experience With Variable Sounds, Smells and Air Conditions

by Tiffany Dobbyn October 18, 2022

2022年11月のNBC BAY AREA ニュースでも、カリフォルニア大学デービス校の新しい施設が紹介されており、Julien Delarue氏がインタビューを受けています。約3分ほどの動画ですが、利用の仕方のイメージがより伝わってきます。公園で食べるサンドイッチ、大学のカフェテリアで飲むカプチーノ、NYのタイムズスクウェアで飲むカプチーノ、雨の日に室内で味わうカプチーノ・・・環境によって味も変わります。宇宙での食事?まだまだ先の話でもないかもしれません。

New UC Davis Lab Showcases Science of Taste
UC DAVIS / NOVEMBER 24, 2022 9:24 PM

近年、没入型環境の利用は様々な分野で進んでいます。イマーシブルームは官能評価・消費者試験による成果を広げる可能性があるようです。