味の謎

先日、フランスのテレビ番組「人間の限界に挑戦!」という、人体の力の謎に迫るドキュメンタリーのテーマが「味とにおいの謎」でしたので、その一部をご紹介します。

味は舌の上で感じるものだけではない、というのは当社も電子味覚システムの説明時にお話しすることが多いのですが、そんな味の複雑さを示す実験がリヨンにあるポール・ボキューズ学院で行われました。

形と味

まずはキッチンで、2種類のクッキーが二人の番組ホスト、ミシェルとアドリアナに提供されます。1つは星型、もう1つは角が丸い形のクッキーです。心理学を学んだ方ならご存じかもしれない「ブーバ・キキ効果」は、被験者の年齢や母国語に関わらず、一般的にその音を聞いて曲線図形がブーバで、ギザギザ図形がキキと答えるというものですが、ここではそのクッキーの名前(音)と形が味にも何やら影響していたようです。丸い方が甘い、ギザギザの方が酸味が強い・・・とか。実は全く同じ材料で作られた形の違うクッキーでした。

食器と味

次にミシェルとアドリアナは窓のない殺風景な部屋に移動し、その一角に用意されたテーブルに着きました。ただ、こんな部屋で食べても・・・というところで周囲の壁に夏のテラスにいるような映像が映し出されました。これでだいぶ二人は楽しい気分になりました。そこへ、ベージュ色のマカロンが黒と白のお皿で1つずつ提示されました。食器の色の黒い方が、マカロンが上品で洗練されて見え、白い方は味気なく見えます。また、カスタードを食べながら、口の中に残るテクスチャーの影響を知るなかで、スプーンの材質・重さの違いがどう味に影響するかが話されました。ここでは、金や銀のスプーンに比べ、ステンレスのスプーンが重くてカスタードを美味しく味わう妨げになっているようでした。

環境と味

その後、壁に投影された映像が大きなピンク色の水玉模様に変わり甘い音楽が流れ、シンプルなバニラ風味の甘さ控えめのマカロンが供されましたが、二人はマカロンの甘さをゆっくりと味わって食べたくなるような至福の気分に包まれたのです。実は、周囲のピンク色は甘さの感覚を増長させる効果があり、二人には気づかれないほどの微かなお菓子の香りを周囲に漂わせていたことが後で明かされました。料理の味そのものだけでなく、食べるときの雰囲気、色、香り、食器の色や材質など様々な要素が味に影響を与えていたのです。

この周囲の壁への映像投影と香りの仕掛けは、当社で取り扱っているポータブルセンサリーブースのメーカー(The Lab in the Bag社)が開発したイマーシブ・マルチセンサリースペースを利用したものです。ポール・ボキューズ学院では、料理の美味しさの追求だけでなく、味に作用する様々な要素や、食べる喜びについての研究が日々行われています。美食の国フランスはセンサリーの研究も進んでいます。


番組名:
Les pouvoirs extraordinaires du corps humain
Tout sur les mystères du goût et de l’odorat